戦略としてのリビルディング・リサーチ

変化が激しい時代のビジネスモデル構築

PERSPECTIVE #4

Rebuilding Research, Perspective #4, text by LABORATORIAN Inc.
Photo by Yoshiaki Honda / LABORATORIAN Inc.

ビジネスモデル構築に欠かせない「リサーチ」

私も含め当社のスタッフは、戦略コンサルティングという仕事を担う中で、新しいビジネスモデルについて日々思考をめぐらせています。

ビジネスモデルを構築するにあたっては、企業、市場、競合についてリサーチを行い、プロジェクトの方向性を定める工程をとっています。

これまでもさまざまなプロジェクトの中でリサーチを活用していますし、リサーチは今後一層精度をあげて取り組むべき課題でもあります。

企業にとってのリサーチの意義

リサーチが大事というのは、マーケティングに関わっている人間であれば多くの人が理解していることだと思います。モニター、インタビュー調査、アンケートによる意識調査など、定量・定性調査を通じたリサーチ手法は多様です。

新しいビジネスモデルを考える際に、リサーチは具体的にどのような意義を持つのでしょうか。結論からいえば、当社が行うリサーチは、既存のビジネスモデルとニーズとの間に生じたギャップを認識するための手法であり、ギャップを認識することで事業戦略を再設計する「リビルディング・リサーチ(Rebuilding Research / 再構築リサーチ)」です。

変化するニーズと変化しないビジネスモデル

時代の変化とともに、人々の価値観やどのような欲求を持つかということも変わっていきます。変化するニーズに即時に対応するのは容易なことではありませんが、過去に一度構築したビジネスモデルであっても、ニーズの変化に対応し、更新しなければいずれ需要がなくなっていくでしょう。以下の図をご覧いただければわかりやすいかと思いますが、変革を意識せず何もしなければビジネスモデルは変わらず、ニーズはどんどん変化していきます。ビジネスモデルとニーズがずれていく、このずれが「ギャップ」です。

Figure 1 Needs and Business model / LABORATORIAN Inc.

成功体験への依存を捨てなければ変革はできない

ビジネスモデルとニーズとの間のギャップが広がるのはなぜでしょうか。現代は、情報化、グローバル化が進み、不確実で変化の激しい時代です。一方、こうした変動する状況においても、銀行、百貨店、放送、大学経営のように長らくビジネスモデルを変えていない業界や企業もあります。こうした業界、企業の多くに大きな変化が生まれないのは、過去にビジネスとして成功し、時代のロールモデルとなった成功体験を持っているからです。成功体験への依存は、事業内容を改善する行動や新しい事業に挑戦する思考を停止させます。変化するニーズを捉えるためには、まず過去の成功体験への依存を断ち切らなければいけません。

Figure 2 Unchanging Business model / LABORATORIAN Inc.

ギャップを認識するためのリサーチ

世の中のニーズが変化することで、それまで重なり合っていたビジネスモデルとニーズとの間にギャップが生じます。ギャップの幅が広がるほど、 ビジネスモデルとしては古くなっていきます。このギャップを認識し、 時代のニーズにピントを合わせることはとても重要です。

前述のように、過去の成功体験に依存したままでは、このギャップは広がり続けるばかりです。ニーズがどのように変化しているのか、製品、サービスにおいて企業の強みをどのように活かしたら現代のニーズに合うのか。当社のプロジェクトにおいては、あらゆる観点から問いを設定し、適切なリサーチをもとにギャップを認識することで、企業の強みとニーズとの接点を見出します。

「リサーチ」で広がるビジネスの可能性

リビルディング・リサーチは、ギャップを認識するための手段です。ギャップの認識は、自社ビジネスを客観的な視点で見直し、強みを活かせる市場を見極めることに繋がります。精度の高いリサーチを意識的に経営に取り入れることは大変メリットが大きいのですが、残念ながら実践されている企業は一部です。

インターネットを通じて情報を得るのは誰もが簡単にできます。しかし、収集したデータの出典、分析、解釈など情報の扱い方の精度によって、情報の価値は全く違うものになります。リサーチを活かしビジネスモデルの再構築を行えば、事業の成功確率が格段に上がるのです。

執筆者

本田吉昌 / Yoshiaki Honda

LABORATORIAN Inc. 代表取締役 / ビジネスデザイナー

1981年生まれ。プロダクト、インテリア、グラフィックデザインを学び、25歳でフリーランスとして独立。クリエイティブディレクターとして教育、飲食、アウトドア、伝統工芸、地方創生、農業、福祉など幅広い業界でプロジェクトを手がける。2017年 戦略コンサルティングファーム LABORATORIAN Inc. を設立。問題の本質を的確に捉え、言語化することを得意とする。近年では、アウトドア・ライフスタイル・ストア「THE GATE」、「さささ和晒ロール」などのブランディングを手がける。主な受賞に「2020年 グッドデザイン BEST100 」、「グッドフォーカス賞〔技術・伝承デザイン〕 」、「Golden Pin Design Award (金點設計獎)2021」。

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