均質化していく街の景観

日本の景観についての問題意識

PERSPECTIVE #1

Photo by Yoshiaki Honda / LABORATORIAN Inc.

均質化していく日本の街

電車に乗り、都心の駅に降り立ってみれば、コンビニ、ATM、百貨店、チェーンのファミレスやカフェ、ファストフード店等が立ち並び、街の外観がみんなどこか似たように見える。こうした経験的印象は、個人的な特別な感覚ではないだろう。手軽で便利な生活が用意されている一方で、街に特色というものがなく、全体に均質化の方向に向かっている。

街が果たす役割

ここでは日本の街に軸をおくが、均質化する理由の一つは、都道府県の各市区町村における街ごとの役割が明確になっていないからである。役割とは、住む人、働く人、その街を利用する人にとってどのような意義があるか、ということである。

たとえば、引越しをするとして、どこに住むかを考えるとしよう。人は、何を基準に居住地を選ぶだろうか。選択肢は人それぞれだが、運動が好きな人なら、気持ちよくジョギングができる公園や緑が多い地域、スポーツジムや趣味に合った運動ができる施設が最寄駅や家の近くに多い土地を選びたいと考えるだろう。一方、読書が趣味の人であれば、充実した図書館があり、本をゆっくり読めるカフェなどの飲食店や公園があり、生活の中で存分に読書を楽しめる街がいい。

「スポーツがしやすい街」「読書がしやすい街」というような特色を持たせることで、住まいを探す人が「こういう生活がしたいから〇〇に住もう」という選択ができるようになる。

特色を打ち出すことに成功している事例もある 。京都府は、観光事業を推進し、日本の歴史・文化遺産を観光資源として打ち出し、「歴史のある街」として広く認知されている。また、北海道は、豊かな自然と海の恵みとしての食を通じて特色を出しており、沖縄では、美しい海や緑にあふれる南国としてのイメージと文化的、歴史的な背景によってその魅力を伝えている。

ターゲットを絞る

特色を出すことで街としての役割を果たすことは、地域活性化にも繋がる。街の役割を考える上で、どういう人をターゲットとして想定するかが一つの課題となるだろう。

ここで重要なのは、全ての人をターゲットにしないという視点である。できるだけ多くの人に関心を持ってもらいたいという思いから、多様な年齢、職業、家族構成など、幅広い層に焦点を定めがちだが、それは誤った判断である。「あらゆる対象に開かれた事業」は、聞こえはいいが、対象が曖昧であるが故に軸が定まりにくい。ターゲットが絞り込めていないことがプロジェクトを進める上でのネックとなる。

ターゲットを絞るには、何を特色とするのかを選び、活かせないものは捨てる選択をしなければならない。この取捨選択ができているかどうかが、中長期的なブランディングとして成功するか否かの分かれ道となる。

「街」の枠組みのレベルは、都道府県、区市町村、あるいは複数の市町村にまたがる一定の範囲のエリアなどに分類できる。この事例では、都道府県の枠組みを設定している。

執筆:塙 萌衣(リサーチャー / LABORATORIAN Inc. )

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